江戸の吉原は、約250年続いた幕府公認の遊廓でした。遊廓は、前借金の返済にしばられ自由意志でやめることのできない遊女たちの犠牲の上に成り立っていた、現在では許されない、二度とこの世に出現してはならない制度です。一方で、江戸時代における吉原は、文芸やファッションなど流行発信の最先端でもありました。
3月にだけ桜を植えて花見を楽しむ仲之町の桜や、遊女の供養に細工を凝らした盆燈籠を飾る7月の玉菊燈籠、吉原芸者が屋外で芸を披露する8月の俄(にわか)など、季節ごとに町をあげて催事を行い、贅沢に非日常が演出され仕掛けられた虚構の世界。そこでは、書や和歌俳諧、着物や諸道具の工芸、書籍の出版、舞踊、音曲、生け花、茶の湯などが盛んでした。そうした吉原の様子は多くの浮世絵師たちによって描かれ、蔦屋重三郎らの出版人、大田南畝(おおた なんぽ)ら文化人たちが吉原を舞台に活躍しました。また、年中行事は江戸庶民に親しまれ、地方から江戸見物に来た人々も吉原を訪れました。
本展に、吉原の制度を容認する意図はありません。国内外から吉原に関する美術作品を集め、その一つひとつを丁寧に検証しつつ、江戸時代の吉原の美術と文化を再考する機会として開催します。展示は、ワズワース・アテネウム美術館や大英博物館からの里帰り作品を含む、菱川師宣、英一蝶、喜多川歌麿、鳥文斎栄之、葛飾北斎、歌川広重、酒井抱一らの絵画や錦絵、修復後初公開となる高橋由一の油絵《花魁》(重要文化財)などに工芸品を加えた約230点による構成です。現代美術家・福田美蘭さんによる描きおろし作品《大吉原展》も出品されます。
【第一部】
入門編として、吉原の文化、しきたり、生活などを、厳選した浮世絵作品や映像を交えてわかりやすく解説します。
【第二部】
風俗画や美人画を中心に、吉原約250年の歴史をたどります。
【第三部】
展示室全体で吉原の五丁町を演出します。浮世絵を中心に工芸品や模型も交えてテーマごとに作品を展示、吉原独自の年中行事をめぐりながら、遊女のファッション、芸者たちの芸能活動などを知ることができます。
【江戸風俗人形】
辻村寿三郎の人形が並ぶ吉原の妓楼の立体模型で遊女の生活を紹介します。
日程 |
3/26(火)~5/19(日)
※会期中、展示替えあり
前期:3/26(火)~4/21(日)
後期:4/23(火)~5/19(日)
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開館時間 |
10:00~17:00
※入館は閉館の30分前まで
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会場 |
東京藝術大学大学美術館 |
休館日 |
月曜日、5/7(火)
※ただし4/29(月・祝)、5/6(月・休)は開館
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